時の記念日の由来
6月10日は、時の記念日という記念日です。民間の団体により決められた記念日で、休日ではありません。時間の大切さを再認識するという内容の日です。時の記念日がどのような経緯でできたのか、由来などをこのページでは紹介しています。
時の記念日の由来や意義
時の記念日が6月10日になった理由
時の記念日は、もしかしたらその名前を耳にしたことの無い方もいらっしゃるかもしれません。国内の時計メーカーの調査によると、時の記念日の存在を知っているのは回答者のうちの約6割とのことなので、皆に周知された記念日というには、今ひとつ認知度が足りないといえるでしょう。
時の記念日の趣旨は、それまでの時間への認識を改めて、時間を大切さにするようにというものです。6月10日が記念日になった理由は、671年の6月10日に天智天皇が水時計を作り、鐘などを鳴らして時を周囲に知らせることを日本で初めて行ったという日本書紀に載せられた故事によります。このときの水時計を漏刻(ろうこく)といい、水を湛(たた)えた器から漏れる水の量で時刻を計るものでした。漏刻は、元々中国伝来の時計で、天智天皇が作ったものは、中国のものを参考にして作られたと考えられています。
時の記念日が作られた理由
時の記念日ができたのは、1920年(大正9年)と約100年前のことで、名前のイメージからすると意外と古い記念日だと思われた方もいるかもしれません。生活改善同盟会によって、その年の6月10日に制定されました。
生活改善同盟会とは、1920年に文部省社会局によって開設された組織です。生活改善同盟会ができる前年に国立科学博物館の前身である東京教育博物館で開催された「生活改善展覧会」は、飲食物、被服、住居、儀礼、社交などの8つのテーマに沿って不合理な伝統的生活を改善する方法を展示したもので、簡単にいうと日本人の生活の近代化を推進しようとするものでした。
この生活改善展覧会を受けて創設されたのが生活改善同盟で、展覧会と同様に近代化のために国民生活を改革することを目標とした組織でした。生活改善同盟は、改善方針や項目を発表し、講演会や講習会の開催、機関紙の発行を通じて、近代的な生活の普及をはかっていました。そうした社会教育事業の一環として、時の記念日が制定されています。また、毎年の恒例行事として、時の記念日には時間を大切にしましょうという内容のビラを撒いて、意識改革のキャンペーンを打ちました。
その当時のビラには、冒頭部分で先述の天智天皇の故事を用いて時間の尊重と定時の励行(れいこう)が説かれ、続いてあるべき時間の使い方などが箇条書きに並びます。そして締めでは、正確な時間を知ることを奨励し、午砲(正午を知らせる空砲、ドンという発射音から半ドンの語源に)は約3町(約330メートル)で約1秒遅れて聞こえるから、その点に留意するようにと細かい注意もなされています。このほかにも「金より時の勘定」「守るは晝(昼)夜二十四時間」「時は是レ金」「時を守らぬものは人の命を奪ふものなり」「時を重んぜぬものは己の命を捨つるものなり」などの標語が踊る様々なビラや小冊子、絵葉書などの印刷物が制作されていました。
電車が1分も遅れれば大ごとな日本を見て、海外から「時間に厳しい。こちらは5分10分遅れるのが当たり前で定刻通りでない」とも評される現代からすると意外かもしれませんが、戦前の日本では時間厳守という意識はあまり無かったようです。むしろ、時間厳守は欧米に倣うべき習慣と考えられていました。
余談になりますが、折りしも時代は世界で初めての総力戦となった第一次世界大戦が終わってまだ2年。一般の国民は別として、大戦を分析した政府内部では総力戦を戦った欧米列強への日本の立ち遅れが認識され、危機感が強まっていました。もしかすると、時の記念日が制定された背景には、欧米の先進国に劣らないだけの国力を身に着けるため、規範や効率性を早く国民に植え付けようという当時の日本政府の焦燥があったのかもしれません。
現代の時の記念日
時の記念日の功績
約100年前になる時の記念日の制定や、それに付随する継続的な啓蒙・教導活動の甲斐あって、現在の日本は世界でも類を見ない時間厳守の国になったといっても良いでしょう。また、国民の時間への意識が高まったことは、縁の下の力持ちとして、日本の経済大国化に一役も二役も買ったのではないでしょうか。そのような時の記念日として、6月10日を休日にしようという声もあります。先述の時計メーカーの同じ調査で、時の記念日を休日にしようという声は約6割に及びました。ちなみに休日化を望む一番の理由は、6月には法定休日が現状では無いからというものです。
時の記念日にギフトを
今まで見てきたように、時の記念日はただの記念日で休日ではありませんが、日常に変化と刺激をもたらすために、時の記念日には親しい方へ時間や時にまつわるギフトを贈ってみると面白いかもしれません。時計なら、目覚まし時計や柱時計などの置時計や掛け時計、持ち歩く用には、近頃では腕時計をつけずに時間をスマートフォンで確認する方も増えているといいますから、ポケットから取り出して見る懐中時計のようなものも洒落てて良いかもしれません。また日時計、砂時計などの一風変わったものも趣きがあるかもしれません。時の記念日にかけて、ちょっとしたギフトで日々に彩りを添えてみるのも良いでしょう。
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