お祝い状やお礼文に使える5月の季語・時候の挨拶を知ろう
依頼、お祝い、お礼、お詫び、報告と目的は違えど、手紙の本質は自分の気持ちや考えを先方に伝えるものです。しかし、会話とは違い、手紙は一方通行ですから、いきなり本題に入ってしまっては、言いたいことだけ言っているような、ぶしつけな印象を先方に与えてしまいかねません。そこで、本題に入る前のワンクッションとなるのが、時候の挨拶です。同時に、この時候の挨拶はあらたまった手紙では必ず使われる手紙のマナーです。伝えたいことが読み手の心にすんなり入って行くようにするためにも、また、さらに礼を失しないためにも、本題に入る前に相手を気遣う心を忘れずに時候のあいさつ文を書きましょう。手紙の文面を考えるのは苦手という方でも、慣用句として形式が定まっているだけに、という方でもすんなり手紙を書き始められますから、時候のあいさつはたいへん便利なツールともいえるかもしれません。ここでは、5月に送る手紙やお礼文で使える季語や時候の挨拶について、代表的なものを紹介していきます。是非参考にしてみてください。
目次
5月とはどういう季節か?
ほどよく暖かな過ごしやすい季節
ゴールデン・ウィークや、こどもの日の5月5日の端午の節句など、心が浮き立つような月が五月です。また、明治期の童謡「茶摘」の出だしにある、「夏も近づく八十八夜~」で有名な八十八夜(立春から88日目の夜、5月2日前後)にも表現されているように、初夏の陽気も見られ、暦の上でも立夏(5月6日頃)を迎えて、気候的にもほどよい暖かさの日が続きます。一年を通じても、たいへん過ごしやすい季節だといえるでしょう。そして陽気と共に、木々や草花に目をやれば、生命力あふれる鮮やかな緑が映える月です。
5月の時候のあいさつの文例
5月の季節感を示すには、植物の緑に関する言葉が良く用いられます。また、お天気の良さなども5月の季節感を示すものにななります。総合すると、爽やかさを感じさせるような時候のあいさつが印象を良くするでしょう。また、時候のあいさつには、季節感を演出するのと同時に、相手の息災を祈るといった要素も欠かせません。五月という過ごしやすい爽やかな季節に応じて、先方が健康に活躍されているような表現パターンがしっくりきます。
【ビジネス向き】
・新緑の候、貴社におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます
・立夏の候、平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
・五月晴れの心地よい日が続き、皆様も健やかにお過ごしのことと存じます
・青葉の候、貴社におかれましては益々御清祥の段、心よりお慶び申し上げます
・目にも青い若葉のみぎり、吹く風も夏めき、ますます活力に満ちた季節となりました
【個人向き】
・新緑のまぶしい好季節となりましたが、ご健勝のことと存じます
・風薫る季節となりました。いかがお過ごしでしょうか
・青葉が美しい季節となりました。お元気でお過ごしでしょうか
・暦の上では夏となりました。お変わりなくお過ごしでしょうか
・青空に鯉のぼりが気持ち良さそうに泳いでいます。お元気でお過ごしでしょうか
5月に送る手紙の結びの文例
書き出しが慣用的な表現ではじまるように、最後も慣用的な表現で締めくくるのが手紙のマナーです。
【ビジネス向き】
・風薫る爽やかな時節、皆様のますますのご健勝を心よりお祈り申し上げます
・軽暑のみぎり、どうかご自愛専一に、ますますのご活躍をお祈り申し上げます
・向暑の折、くれぐれもご自愛下さい
・青葉繁れる好季節、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます
・時節柄、ご自愛専一にてお願い申し上げます
【個人向き】
・風薫る爽やかな季節です。心身共に十分に癒し、暑い季節に備えましょう
・初夏の風も爽やかな頃、心穏やかにお過ごしください
・暑い季節に向かいます。健康にはくれぐれもご留意ください
・連休疲れを残さないよう、気持ちを入れ替えて、お互いますます頑張りましょう
・季節の変わり目に、体調を崩されませんよう願っています
5月を意味するキーワード
季節感ある単語で5月を表現
俳句にあるような季語と同じように、手紙にも習慣的に用いられる季節を示す言葉があります。たとえば、霜の降りなくなる目安として「八十八夜」という言葉があり、5月を示す慣用句となっています。こうした季節を示すキーワードをあいさつ文に入れることで、季節のあいさつ文となります。八十八夜を用いた例を挙げると、「別れ霜の八十八夜といいますが、だいぶ暖かくなってきましたね」と、暖かくなってきた天候の変化を、より明確に表現できます。
また、古風な表現を使って、「○○の候」「○○のみぎり」と、時候の挨拶の冒頭に入れると、よりあらたまった印象を先方に与えられます。後ろに「ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」などとかしこまった様子で続けるときに、セットで使われることが多い表現です。
5月に使える季節を表す言葉
5月の季節を示す言葉の代表的なものには、次のようなものがあります。
新緑、青葉、若葉(草木の芽吹く季節のこと)、新茶(5月上旬が季節とされています)、八十八夜(立春より88日後、5月2日前後)、立夏(二十四節気のひとつ、5月6日頃)、薫風、風薫る(吹く風にも若葉や花の香りが満ちていること)、晩春(春を三つの月にわけたうち、最後の月のこと)、初夏、軽暑、向暑(夏や暑さを感じはじめる時期)、五月晴れ(本来は陰暦の5月の晴天のこと。現代の暦では6月にあたり梅雨の晴れ間を指したが、現代では5月の晴天に使用される)、菖蒲(端午の節句で邪気を祓うとされた植物、読みが武道や武勇を重んじる「尚武」に通じるため、端午の節句は男の子の祭りに)、つつじ、すずらん、藤花(5月近辺が見ごろの花)など。
手紙が先方に届くタイミングに合わせて、使い分けて行きましょう。季節感からかけ離れたものにならないよう、その時の気温や気候を気にしつつ、語句を選択することが大切です。
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