春の社日(春社)の意味、風習について
春の社日(春社)という言葉はあまり聞き慣れない言葉のため、どういう意味? と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。この春の社日という言葉がよく使われていたのは、かつて農業こそが日本人の暮らしを支えていた主な基盤であった頃に遡ります。ここでは、そんなあまり今の現代人には知られていない「春の社日(春社)」の意味や、2017年の春の社日の様子などをご紹介していくので、是非参考になさってください。
春の社日の意味
春の社日(春社)の意味とは?
古くは江戸時代、明治、そして大正時代、昭和の始めの頃までは、農作業が始まる春という季節は、1年の始まりをあらわす季節でした。そして、農業を中心に考えれば、春に対して秋は農業で言うところの収穫の季節とも言えます。
この秋の収穫は、農作物を育ててきた人々にとっては、まさに喜びの時期であり、それと同時に次に来る寒い冬を気に病んでしまう、または心配してしまうといった懸念もありました。そして、春の社日(春社)の意味とは、この秋の社日とは真逆の作物を新たに育て始める、種まきの時期といわれ、これから秋に向けてまたひと頑張りしようと人々が意気込む活気あふれる時期でもあるということです。そんな春の社日(春社)には農民たちはかつて、五穀を供えて秋の豊作を神様に祈り、そして秋の社日には収穫した稲穂をお供えし、その年の収穫を神様に感謝していたのです。また、この春の社日は春社とも呼ばれ、春の歳時記でも紹介されている春の季語でもあります。この春社は春の句を詠んだ俳句にもたまに登場するほど、年配の人々などには知られているようです。
社日とは?
このように、農業に勤しむ人々の生活に重きを置いて考えていた昔の人々の節目の日を、ここでいう「社日(しゃにち)」と呼んでいるのです。社日とは、雑節(ざっせつ)の一種であり、年2回春と秋にあります。雑節は二十四節気を補うため暦に取り入れられたとされる「日本の四季の区分け」のようなものです。この春と秋に訪れる節目の日でいうと、今でもよく耳にする「春分の日」や「秋分の日」などが頭に思い浮かびます。この社日は、その春分の日と秋分の日に一番近いとされる「戊(つちのえ)」と呼ばれる旧暦の読み方の日とされ、春分の日と秋分の日はそれぞれ、春社や秋社とも呼ばれていました。それに最も近いとされる「戊」の日とは、大地や自然をつかさどる土の神様を祀る日として有名だそうです。そして、2018年の社日は、春社が3月17日、秋社が9月23日です。社日の頭文字の社という字は、その土地を守る神様「産土神(うぶすながみ)」と呼ばれて人々から親しまれていました。
春の社日の風習について
社日の由来
この社日の由来ですが、もともとは中国から日本に伝わった風習だとされています。中国から伝わった後は、日本風にアレンジされ日本人の生活にその後、日本独自の風習として長年にわたり定着してきました。もともと中国では、社日とは土の神、部族神、祭りそのもののいくつもの意味をあらわしていて、その土の神を祀る戊の日に豊作祈願をしていたそうです。そして、その社日には中国の人々もかつて春と秋の2回、神様を祀っていました。春は豊作を祈り、秋は収穫に感謝するという部分では中国の人も日本の人も、昔から変わらない共通の意識を持っていたと言えます。そして、その後「社日」が中国から日本に伝わり、日本風にアレンジされ、日本に古くから伝わるその地の信仰や田の神信仰などと合わさって、日本独自の風習として地域に根差したものとなったといわれています。
春の社日について
春分の日も過ぎて、3月中旬を過ぎる頃になると朝晩の寒暖差はあるものの、徐々に冬から春にかけて気候が温かくなるのを感じて気分がうきうきしてきます。また、この春の社日はその年によって日付けが少しずつ変わり、2016年は3月17日、2017年は3月22日、2018年は3月17日、2019年は3月22日、2020年は3月16日といった具合です。
日本に今なお残る春の社日の風習
かつての日本人の生活に根差していた春の社日や秋の社日ですが、今ではめっきりその呼び名を耳にすることも少なくなってしまいました。ちなみに、この春の社日には、お餅をついたりして1年の豊作を祈るという風習がある地域は多いですが、中にはお酒を飲むと、耳が良くなる(治聾酒:じろうじゅ)といわれている地域もあります。こういった風習の 違いは日本の地域によって、非常に細分化されていて多岐にわたります。また、地域によってはこの日を土の神様を祀る日というより、農耕の神様を祀る日というニュアンスの強い風習があるところも多く、例えば信州の方では春を神迎え、秋は神送りと呼び、もちをついて祝い、九州地方などでは、「お潮井」と呼ばれる真砂を、竹籠に入れ家に持ち帰って 玄関先に魔除けとして飾られることもありますし、身を清めるためにも使われます。ほかには稲を一株抜いて田の神様に捧げるお祭りが行われる地域もあるそうです。
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