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二日灸の意味や二日灸を行う場所を考える
二月(如月)
 
習慣・風習
 

二日灸の意味や二日灸を行う場所を考える

二日灸は「ふつかきゅう」または「ふつかやいと」と読み、灸は「お灸」のことです。お灸は、よもぎの葉を乾燥させた「もぐさ」を身体の特定の場所に置いて火をつけ、その温熱効果で体の不調を緩和するとされる古くからある民間療法です。このお灸を旧暦の二月二日と八月二日に行うことを二日灸と言います。この記事では、この二日灸の意味やどのように行うかなどをご紹介していきますので、ぜひ参考になさってください。

二日灸の意味

二日灸の意味とは

お灸は経絡といわれるツボにもぐさを置いて火をつける温熱療法ですが、二日灸は旧暦の二月二日と八月二日にお灸をすえることで普段お灸をするより二倍の効果があるとされる日のことです。さらに病気や災難にあわず無病息災でその年を暮らせる、長寿になるなどとも言われています。なかでも二月に行う二日灸は二月の別名でもある如月を用い、如月灸(きさらぎきゅう・きさらぎやいと)とも呼ばれる伝統的な習わしです。

二日灸の由来とは

この言葉の由来は諸説ありますが、中国の「天灸」というおまじないが由来という説と、節句の習わしからきているという説があります。中国の天灸とは、子供の無病息災を願って額に×や+などの印を書くおまじないのことです。温熱療法であるお灸も中国から伝わったと言われているため、無病息災を願う天灸とお灸が合わさったことが二日灸の由来ではと言われています。
また、節句とは季節の変わり目に五穀豊穣や無病息災を祈って神様にお供えをしたりお祓いをする習わしのことをいいます。現在では三月三日の桃の節句や五月五日の端午の節句などがありますが、月と日で同じ数字が重なる日を節句と捉えられているため二月二日の二日灸もその名残とも考えられるでしょう。

季語としての使われ方

二日灸という言葉は、俳句における季語としても使われています。現在では馴染みのない言葉ですが、季語として使われるほどかつては一般的な習慣だったと言えるでしょう。二日灸は旧暦の二月二日と八月二日を指しますが、二月二日のそれは春の季語として使われ「春の灸」とも表現されます。また八月二日の場合は秋の季語となり、「秋の灸」とも「後の二日灸」とも表現されます。
この季語を使った俳句としては、小林一茶の「かくれ家や猫にもすへる二日灸」や、正岡子規の「花に行く足に二日の灸(やいと)かな」などが挙げられますが、日常の様子を詠んだ俳句であることから、この風習が一般的に行われていたことをうかがうことができるでしょう。

二日灸を行う場所

二月と八月にお灸をする意味

二日灸は旧暦の二月二日と八月二日に行うお灸のことですが、ではなぜ二月と八月なのでしょうか。旧暦の日にちを新暦で考える場合は毎年同じ日が当てはまるわけではありませんが、旧暦の二月二日は新暦のだいたい三月中頃にあたります。冬から春への季節の変わり目で体調を崩しやすく、地方ではそろそろ田植えなどの農作業が始まり忙しくなる時期です。また旧暦の八月は新暦の九月にあたり、農作業では収穫の時期なのでやはり忙しくなる時期です。このような時期に体の調子を整えるため、習慣としてお灸をすえると良いと考えられたのではと言われています。
由来と考えられている節句や中国の天灸は、おまじないや行事のひとつと捉えられていますが、実際のお灸は健康を考えた実用的なものです。だからこそ長らく一般的な習慣として行われてきたのでしょうし、季語としても当たり前に使われてきたのでしょう。その中でも季節の変わり目や農作業の転機に則した習慣は、庶民の生活に根差した風習だったと言えます。
また、江戸時代には儒学者の貝原益軒(かいばらえきけん)がその著書である養生訓の中で、「脾胃(胃腸)が弱く、食が滞りやすい人は毎年二月八月に灸をするとよい」とも記しています。養生訓は健康法を記した指南書で、このことからも二月と八月にお灸をすえることに意味があり、一般的なことだったと言えるでしょう。

二日灸はどこに行うとよいか

お灸は体の特定の位置にあるツボに行い刺激しますが、このツボや経絡を刺激すると体の不調を整えることができるという考え方はもともと中国から伝わったものです。このやり方は日本には飛鳥時代に伝わったとされ、長い歴史の中で治療法として確立されてきました。お灸をすることで胃腸などの内臓や肩や腰のハリといった体の不調にアプローチするとともに、お灸の熱による温熱効果が免疫力の向上に作用すると考えられています。
二日灸はどこに行うかという決まりなどはありませんが、冬の寒さから春にかけての二月には、体の血行を良くすると言われる肩にあるツボの「肩井(けんせい)」がおすすめです。また、八月の暑さには体のだるさや疲れにおすすめの足裏にあるツボの「湧泉(ゆうせん)」や、胃腸を整えてくれるお臍の上にあるツボの「中脘(ちゅうかん)」も良いでしょう。
最近では、火をつかわないお灸や煙の出ないお灸などもあります。古くからの習わしになぞらえて、お灸を楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。