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お正月に呑める特別なお酒お屠蘇(とそ)
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お正月に呑める特別なお酒お屠蘇(とそ)

お屠蘇は、お酒の中でも正月に楽しむ特別な種類となっています。もちろん一風変わった名称なだけに、作り方や成分、意味などは一般的なものと異なります。お屠蘇とは、どのようなお酒なのでしょうか。普通のお酒との違いや、歴史についてご紹介します。

お屠蘇(とそ)とは

お屠蘇の特徴

お屠蘇と書いて、「おとそ」と読みます。正月におこなわれる風習のひとつとなっており、おせち料理と合わせて楽しむお酒のことです。おめでたい正月には日本酒を楽しむという人も少なくないかもしれませんが、お屠蘇をちゃんと用意している家庭は、近年減ってきているかもしれません。なぜなら、お屠蘇の変わりに普通の日本酒をもちいるといったケースが、多くなってきているためです。お屠蘇は、同じお酒でも少し作り方が異なります。つまり、市販されているそのままの日本酒では正式な意味を成さないのです。その点日本酒を味わうだけなら手軽なので、広くもちいられているというわけです。とはいえ、せっかく日本人として生まれてきたなら、古くからの風習を正式にやっておきたいものでしょう。作り方や意味を知って、ぜひ意義ある正月に役立ててみてください。

どうやって作るの?

まず、お屠蘇を作るための材料についてご紹介します。主には、日本酒、みりん、そして屠蘇散という専用の原料(漢方)を使用します。聞きなれないものかもしれませんが、スーパーや酒屋、ドラッグストアで普通に売っていたり、また年末にお酒やみりんを買うとついてくるといったケースもあるようです。わりと身近に手に入れられるので、安心してください。
作り方としては、まず酒とみりんを合わせます。このとき、みりんはみりんでも本みりんを用意するようにしてください。料理用の一般的なみりんには塩分が入っており、味を邪魔してしまうためです。割合は、好みで問題ありません。酒が多いと辛口に、またみりんを多めにするとまろやかな口当たりが表現できます。
2つの材料を混ぜ合わせたら、次に屠蘇散を浸します。説明書き通りの時間浸して、成分を抽出しましょう。平均としては、だいたい5~8時間ほどじっくりつけておくのが一般的です。注意点としては、決められた時間以上に浸しすぎないということが挙げられます。つけ過ぎると、濁ったり沈殿物が生じてしまったりして、正月のめでたい席にふさわしくない見た目となってしまいます。
作り方としては、このように材料を合わせるだけで問題ありません。決して難しくもないので、気軽に実践できます。おせち料理の準備など、正月は何かとあわただしい時期ですが、これなら気楽でしょう。

お屠蘇(とそ)の歴史

お屠蘇の風習はどのように始まったの?

まず、お屠蘇の名前についてご紹介します。この2つの漢字には、それぞれ意味が込められているそうです。「屠」は「ほふる」、そして「蘇」には病をもたらす鬼を表しています。つまりお屠蘇は、病気を払うために飲むというわけです。また一説には、「蘇」にはよみがえるという意味があることから、邪気を屠り魂を蘇らせるためのお酒ともいわれているようです。いずれにおいても、縁起のよさそうなお酒であることには変わりありません。
そんなお屠蘇の始まりですが、古代中国であるといわれているそうです。三国時代の医師、もしくは屠蘇庵という洞窟に住んでいた仙人が考案したなど、厳密な始まりはこちらも諸説あります。そうした文化がのちの日本に伝わり、平安時代頃より日本の宮中にもたらされ、さらに江戸時代には一般の日本人にも親しまれるようになっていったそうです。

中国らしい成分で構成されている

中国発祥であるという説は、本来の成分から窺うことが可能です。前述にて紹介した屠蘇散は、実は屠蘇延命散と呼ばれる複数の生薬を配合して作られています。中国では古くから漢方や薬酒が一般的であるため、生薬効果をとりいれたお酒があっても何ら不思議ではありません。
主には、オケラ、もしくはオオバオケラという植物の根が原料のビャクジュツ、山椒、桔梗の根、シナモンの原料である肉桂、おせち料理でもよくもちいられる植物「防風」、そしてみかんの皮である陳皮といった成分が代表的です。個人で揃えようともなれば大変ですが、浸すだけでこれら成分が用意できる屠蘇散は、何とも便利に感じられます。

昔ながらの楽しみ方

お屠蘇は、作り方のみならず飲み方も重要となっています。病気や邪気を打ち払うといった効果を高めるのであれば、正しい方法でおこなうのが理想的でしょう。
歴史上の記録によれば、大晦日の晩に屠蘇散を井戸の内側に吊るして、翌朝それを取り出したのち、井戸の水でお屠蘇を作っていたそうです。もちろん現代には適さない方法かと思われるので、大晦日の晩から屠蘇散を使ってお屠蘇を作っておく、といった具合で大丈夫でしょう。
飲み方としては、元旦の朝に「若水」こと朝一番に汲んだ水で手を清め、神棚・仏壇を拝んだのち、おせち料理を食べる前に一口味わうといった流れとなります。また注ぎ方も一風変わっており、家族全員が東を向いて、飲む人の右側から注ぎ、また年少者から年長者へと順番に飲んでいきます。例外として、厄年の人は他の人から厄払いの力を分けてもらうため、年齢にかかわらず最後に飲むともいわれているそうです。その他、飲むときに唱える「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」という言葉も忘れてはなりません。風習を守ることはもちろん、家族の絆を深める意味でも覚えておいて損はないでしょう。楽しみながら、実践してみてはいかがでしょうか。