消防職員の士気を上げる行事、出初式(でぞめしき)
お正月のニュースを見てみると、毎年紹介されている風物詩ともいえるものがいくつかあります。その中でも代表的なものとして、出初式があるでしょう。消防署で行われているお正月のイベントですが、実はかなりの歴史のあることをご存知でしょうか? 是非この機会に見学してみるのもおすすめです。
目次
出初式の歴史
江戸時代から行われている行事
新春行事の中でも欠かせないものになっている出初式ですが、その起源は江戸時代にさかのぼります。万事2年(1659年)にそのルーツがありますので、実に350年を超える歴史を有しているわけです。なぜ行われるようになったか、それはその2年前の明暦3年の大火がきっかけだったとされています。文字通りの大火で、焦土のみになった江戸市に希望や信頼を与えるために幕府直轄の組織、定火消(じょうびけし)により始められるようになりました。その後定期的に出初式が行われるようになって、毎年1月4日に上野東照宮で行われるようになっていきます。
日本全国に広まっていく
最初は上で紹介したように上野東照宮でのみ執り行われていました。しかし享保3年、定火消の誕生から60年くらい経過したところで町火消もどんどん組織されるようになっていきます。この時定火消の行っていた出初を町火消でもまねて行うようになったとされます。町火消の場合、「出初」とは言わず「初出」と呼ばれていました。しかし内容は同じで1月4日に木遣歌(きやりうた)を歌って、はしご乗りを行ったとされています。このようにしてそれぞれの組の町内でも行われるようになって、日本全国にその習慣が広まっていったのです。
明治時代後もなお続く
明治時代になると、町火消以外の江戸消防は廃止になりました。そして町火消を消防組と呼ぶようになり、消防組織の見直しがなされていきます。しかし新しいシステムが整備された明治8年1月4日に、東京市内のすべての消防組を丸の内の旧東京都庁舎の近くの東京警視庁練兵場に集めました。ちなみに東京警視庁とは、今の警視庁の前身です。そして「第1回東京警視庁出初式」を行い、明治維新以降中断していた出初式は復活します。昭和15年からは1月15日に執り行うように変更されたり、戦争の影響で昭和20年・21年には中止されたりしました。しかしそれでもなお現在も続いている、新春の欠かせない儀式となったわけです。ちなみに昭和28年に出初式の実施日が変更されて、1月6日になって現在に至っています。平成27年には韓国のソウルから消防災難本部の救助隊員が参加して、消防救助機動部隊との連携を行うなど、ワールドワイドなイベントになりつつあります。
出初式の内容
出初式の醍醐味・はしご乗り
出初式は日本各地の消防で行っていますから、細かな内容は若干異なるかもしれません。しかしその中でも欠かせない演目もいくつかあります。出初式というと、はしご乗りをイメージする方も多いかもしれません。三間三尺(約6メートル)の青竹に14段のはしごの桟を取り付けたものの上で、いろいろな技を披露するというものです。江戸消防記念会の方が行うのですが、会員にはランクがあります。組頭を筆頭として、副組頭・小頭・筒先・道具持ち・平人の順番です。はしご乗りをすることができるのは、道具持ちの方です。はしごの先端部分のことをはいふきといい、はいふきや桟を使って、いろいろな技を見せます。技も多種多様ですが、代表的なものとして「背亀(せがめ)」や「腹亀(はらがめ)」「鯱(しゃち)」などがみられるでしょう。
はしご乗りの由来はどこにある?
出初式の風物詩になった感のあるはしご乗りですが、起源はいつかについてははっきりしたことはわかりません。有力とされているのが延宝年間の1673~1681年のことと考えられています。この時期にはしごさしが見世物の一つで行われるようになったという記述があります。そのほかにも今でははしご乗りの定番であるしゃちほこ立ちですが、これは享和3年(1803年)に大阪の女軽業師が行ったという記録もみられます。このように出初式におけるはしご乗りは古くから行われていることがわかります。ちなみにはしごの歴史は、さらに古いようです。弥生時代、登呂遺跡などからはしごの原型が出土されているので、古来よりはしごは日常的に使われていたようです。
木遣歌も欠かせないもの
出初式の中でもはしご乗りとともに定番といわれているのが木遣歌です。木遣歌は江戸時代の中期ごろにはやったといわれており、当時のとび職が歌うようになったのがルーツとされます。1583年に大阪城が築城されますが、この時に大木を運び出す際に出した掛け声や音頭取りをベースにして作られました。町火消ができたときにそのメンバーにとび職が多かったことから、木遣歌も組の中で自然と広まっていったわけです。木遣歌は出初式のほかにも、祭礼や建前の時などの儀式の際にうたわれることも多いです。ちなみに木遣歌は110~120曲とバリエーションも豊富で、地域によって歌が異なるかもしれません。
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