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年の暮れに開かれる歳の市(年の市)
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年の暮れに開かれる歳の市(年の市)

12月になると年始の準備などで忙しくなる人も多いでしょう。この12月になると日本各地で、歳の市(年の市)なるものが開催されます。なんとなく羽子板をイメージする人も多いでしょう。ここでは歳の市(年の市)の由来やどのようなものが売られているかについて、詳しく見ていきます。

歳の市(年の市)の由来

浅草が由来

歳の市(年の市)は、江戸時代の中でも万治年間である1658~1661年ごろに浅草で開催されたのが最初といわれています。こうしてみると、実に350年以上の歴史を有しているわけです。歳の市は、江戸各地で同じような催し物が行われていました。しかしその中でも多くの人が集まり有名だったのが、浅草観音の歳の市だったといいます。その盛況ぶりは図絵にも記されているほどです。図絵を見ていただければお分かりでしょうが、どこも人でごった返しているほどです。休日の新宿や渋谷と言えばイメージしやすいでしょうか?
こちらの市は12月に開催されます。正月用品や縁起物が売られ、さながら正月支度をするためのバザーのような趣でした。浅草から江戸の各地に広がっていき、今では日本各地で開催されるようになっていったといわれています。ちなみに「晦日市」や「十日市」といった名称のつけられた市があります。これらの名前のルーツも、歳の市です。

徐々に廃れていった

江戸時代では歳の市が江戸を中心として各地に広がっていき、かなりの賑わいを見せていました。ところが明治時代になると、徐々に開催される市の数は少なくなります。その理由として大きかったのは、商店の出現です。明治時代に入ると通常の商店でお正月関係のアイテムを取り扱うようになりました。このため、市をわざわざ開催する必要性がなくなったのです。ルーツだった浅草でも正月用品を販売する出店は少なくなりました。その代わりに羽子板を出すところが増えていきます。

いつ開催されるかは場所による

ではいつ開催されるかですが、これは場所によって異なるので注意です。まずルーツの浅草観音の場合、毎年12月17~19日の3日間開催されます。しかし江戸の主要なものを見ると、若干開催日時は異なります。神田明神では12月20・21日に開催されます。芝神明は12月22・23日です。12月24日になると芝愛宕神社、12月26日は麹町平川天神、そしてラストが12月25~30日の日本橋四日市です。日本橋四日市は「納めの歳の市」と呼ばれ一年を締めくくる重要な歳の市です。年末にはこのような神社巡りをして、歳の市を楽しんでみるのもよいでしょう。

歳の市(年の市)で販売されているもの

図絵で見る歳の市の様子

江戸時代の歳の市の図絵を見ると、特に浅草ではかなりの活況を呈していることがわかります。多くの人が訪れていますし、「正月屋」「えびす屋」「大黒屋」「宝来屋」「福徳屋」などの屋号が並んでいます。いずれもいかにも縁起のよさそうな名前です。「万歳屋」のような思い切った名称を付けているお店もあったようです。そして興味深いのは「大安売り」というのぼりを立てているお店のある点です。大安売りの言葉は今でもスーパーなどの商店で使われている言葉です。江戸時代から使われているとなると、いかに歴史のあるコピーかがわかります。

多種多様な商品を販売

歳の市で販売されているものを見ると、江戸時代は実に様々な商品を取り扱っていました。まずはしめ飾りや神棚、羽子板、凧などの正月に関連する用品がみられます。そのほかにもエビや昆布、鯛、お餅といった食品を取り扱っているお店もありました。ここまでは正月に関連する商品といえます。しかしさらにまな板や柄杓、桶などの台所アイテム、そしてお店によっては衣服や植木を販売しているところもありました。今でいうところの上野のアメ横などの商店街やバザーに近い雰囲気があったのかもしれません。

羽子板市とも呼ばれる

今の歳の市は、羽子板市という認識を持っている人も多いでしょう。正月用品を当初取り扱っていたのですが、そのうち羽根つき用の羽子板も売られるようになりました。徐々に販売される羽子板には、その時々で人気だった歌舞伎役者の舞台姿の似顔絵などをつけて売られるようになります。今のアイドルグッズではないですが、江戸の女性は我先にとひいきにしている役者の羽子板を買い求めていたそうです。ちなみにこの羽子板についている羽根ですが、女の子が健やかに育つようにという願いが込められています。このため、女の子が生まれた家庭には羽子板を初正月(うまれてから初めて迎えるお正月)のお祝いとして贈る習わしがありました。女子の健やかな成長を願う人々、また女性がひいきの役者の羽子板を買い求める光景は華やかです。人目を引くということで、歳の市を開催するにあたって羽子板は欠かせない商品となりました。ですから歳の市=羽子板市という認識が広まったわけです。