中国にルーツがある追儺(ついな)とはどのようなものか
追儺は、日本に古くから根ざす伝統的な文化です。現代では、この言葉を聞いてそのような内容かすぐ分かる人は、そう多くないかもしれません。なぜなら、別の名称の方が有名であるためです。追儺がどのような存在なのか、またどういった歴史があるのか、詳しくまとめました。
追儺(ついな)の歴史
追儺って何のこと?
追儺と書いて、「ついな」と読みます。この文字自体に馴染みがある人は少ないかもしれませんが、行事自体はとても有名です。なぜなら、これはいわゆる「節分」のことであるためです。節分といえば、毎年2月3日に訪れる豆まき行事として広く知られています。シーズンになると、テレビニュースや各寺院などで大々的にイベントのお知らせや紹介がおこなわれます。参加したことがない、経験がないといった人でも、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
なぜ節分のことを追儺とも呼ぶのか、少し気になるところでしょう。節分行事を表すのであれば、わざわざ別の名称を使う必要はないように思えます。むしろ、混乱を招く原因にすらなってしまいそうです。ですが、それでもなお「追儺」の方も重要な名前であるといえます。なぜなら、節分の元祖ともいえる行事の名称であるためです。追儺が存在していなければ、そもそも節分自体も存在しなかったといっても過言ではありません。両方の名称、そして意味を知っておく価値は、大いにあるといえるでしょう。
追儺の歴史について
節分の元祖である追儺は、古来中国から伝わってきたといわれています。中国では、節分の時期になると毎年桃弓・葦矢を持った公卿(くぎょう)という上級貴族が、鬼に扮した雑役係の役人である大舎人(おおとねり)を追うという文化がありました。当時は豆でなく、矢や五穀、小豆、その他小石などを撒いて春の福を求めていたそうです。午後八時頃より始められ、「鬼やらい、鬼やらい」と唱えながら宮中を歩き回り、疫鬼を退治するといった内容です。そうした理由から、追儺は別名「儺」の一文字による「おにやらい」とも呼ばれています。撒く物やセリフは違えど、現在の節分にも何となく通ずるものであるように感じられます。
日本に入ってきたのは、藤原京(飛鳥)時代頃であるという説が広くみられます。日本でも、最初は中国と同じように弓矢などを使っていたそうですが、歴史と共に日本独自のものへとアレンジされていき、現在と同じような大豆を撒く行事へと変化していきました。全国的に広がりを見せ始めたのは、さらにのちの室町時代頃だそうです。
追儺(ついな)の内容
現在の追儺について
追儺こと節分は、説明がいらないほどに有名な存在かもしれません。寺院でおこなわれる本格的なもののみならず、家庭でお面をかぶって楽しむといった風習も広く知られています。手軽に手に入る鬼のお面、専用の豆まき用大豆などは、スーパーやコンビニなど、身近なところで手に入れることが可能です。大人になってからやっていないという人でも、子供の頃に親子で楽しんだという人が、少なくないのではないでしょうか。
また、節分は豆を撒くだけでもありません。たとえば、年齢の数だけ豆を食べるという風習です。これはかつての天皇が、厄払いのために年齢の数だけ豆と銭を包み、身の厄を移して捨てるという風習をおこなっていたことが起源とされています。鬼を追い払うのと合わせて、さらなる厄払いの効果が期待できそうです。
またもうひとつ、恵方巻きについても近年は有名な存在となってきています。恵方巻きという名称の太巻き寿司を、その年の恵方を向きながら食べると福を呼び寄せられるという風習です。ただ食べるだけでなく、まるかぶりする、食べ終えるまでは私語をしてはならないなど、ルールが伴うユニークな存在です。近年はこの恵方巻き文化が広く注目されており、それこそスーパーやコンビニなどでも専用の寿司商品を目にすることが可能となっています。各商店の販売戦略のひとつでもありますが、日本古来の文化を手軽に見つめ直せる、うれしい傾向といえるのではないでしょうか。
現代にも残る「追儺」の名称
さて、追儺という名称よりも節分の方が広く知られていますが、だからといって完全になくなってしまっているわけでもありません。一部の寺院では、今なお「追儺」という名称をもちいて豆撒き行事をおこなっているところが存在します。たとえば中でも大規模な寺では、毎年恒例の「追儺式」として親しまれています。一陽来福・諸縁吉祥・除災開運をそれぞれ祈願するための行事として、関取や人気俳優なども招き、大々的に開かれているのです。恒例行事なだけに、毎年多くの参拝客で賑わいます。
またこの行事には、豆撒きが終えられたあとの「福豆」を拾って持ち帰り、神棚などに供えたり家に撒いたりすることで、1年を災いなく過ごせるという言い伝えもあるそうです。豆撒きそのものはもちろん、帰宅後も引き続き楽しめる、一度で二度おいしい行事といえるのではないでしょうか。
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