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日本の伝統行事のひとつ「虫送り」とは?
伝統行事
 

日本の伝統行事のひとつ「虫送り」とは?

日本の伝統行事として広く知られる「虫送り」は、豊作や五穀豊穣を祈願する祈祷行事のこと。ここでは虫送りにまつわる様々な伝説や、行われる時期、さらには虫送りの方法などについて詳しく説明していきます。

虫送りについて知る

虫送りとはどんな行事か?

虫送りは別名「虫追い」とも呼ばれ、農作物の害虫を駆除し、その年の豊作を祈願する目的で行われる伝統行事のこと。地域にもよりますが、春から夏にかけての頃に行われるケースが主で、夜にたいまつをたき、太鼓などを叩きながら行列で付近を練り歩くスタイルが多い様です。ちなみに、かつて虫送りは全国各地で行われる行事でしたが、農薬が普及した現代においては、害虫による被害が大幅に減っていることや、数多くのたいまつを掲げて行列することで大規模な火事が発生する懸念もあり、近年では虫送りを行う地域が減ってきている様です。

虫送りの歴史と起こり

虫送りは、別名「実盛(さねもり)送り」とも言われます。その理由は、平家の栄華と没落を描いたとされる「平家物語」の中に登場する、斎藤実盛に由来しているからに他なりません。物語の中で実盛は、稲株に足を取られて転倒し、敵方に討たれて最期を迎えています。そしてそれを恨み、稲を食い荒らす害虫に生まれ変わったと言い伝えられているのです。そのため、稲虫は別名「実盛虫」とも言われており、西日本では虫送りのことを「実盛送り」または「実盛祭」ともいわれます。

虫送りが行われる時期とは?

虫送りは、春、初夏、秋といった大きく分けて3つの季節に行われます。なぜ時期が違うのかと言うと、それは、地域ごとに虫送りの目的が異なるからに他なりません。まず、春に虫送りを行うのは九州地方や北アルプス山麓となり、主に田植えが終わってから行うのが常です。つまり、植えた苗に害虫が寄り付かず、しっかり育って欲しいという豊作祈願として行います。そして、稲に実がなり始める初夏にも豊作祈願や五穀豊穣のために虫送りを行う地域もある様です。また、イナゴによる被害を防ぐため、秋に虫送りを行う地域も少なくありません。

虫送りの地域差について知ろう

地域ごとにどんな差があるのか?

虫送りを行う目的の多くは、五穀豊穣や豊作祈願です。そして、行事の中で行う行為としてどれも共通しているのは「農作物に害を与える虫を払う・流す・追い出す」こと。つまり、生活圏内から害虫を排除するための行為であるのは、どの地域のどの虫送りでも同じです。しかしながらその「方法」については、各土地によって様々あり、例えば四国の一部の地域では、虫を捕まえて竹筒に入れて封をしたり、虫を紙に包んで捨てるといった方法で虫送りをしているそうです。また、災いの身代わりになってくれる藁人形を用意して川に流したり、はたまた焼き払うことで浄化するところもあります。しかしながら最もオーソドックスなのは、田んぼの周辺や畦道を、火を灯した松明を持って練り歩き、鐘や太鼓を鳴らしながら行列するケースです。時期や方法こそ異なれど、害虫を排除し、農作物が無事に育ってくれることを祈願するのは虫送りの目的における全国共通の認識であることがわかります。

全国各地の虫送りについて

伝統行事として全国的に行われる虫送りですが、中には珍しい形で行なっているところもある様です。例えば愛知県常滑市矢田における虫送りは、「うんか送り」「虫送り」といった二種類の虫送り行事が行われています。まず「うんか送り」は田植え後となる6月下旬に行われ、氏神八幡神社で祈祷した後、平家の武将、斎藤別当実盛に見立てた藁人形と孔雀に似たフウフの鳥の紙人形を先頭に高く掲げ、太鼓や鐘を鳴らしながら矢田川堤防に沿って練り歩き、最後に藁人形を川へ流すもの。そして「虫送り」は7月初旬に行われ、青竹の芯に藁を巻いた松明に、八幡神社で貰い受けた神火を移して灯し、太鼓とホラ貝を鳴らしながら、うんか送り同様、矢田川沿いを練り歩きます。そしてハイライトとして矢田橋で松明を一箇所に集めて燃やすといった流れです。行事の内容としては別段珍しいものではありませんが、目的別に2度行われるあたり、他にはないものでしょう。
また、埼玉県秩父郡皆野町の立沢で行われている立沢の虫送りでは、7メートルもの竹の先に御弊(ごへい)、幣束(へいそく)と呼ばれる赤や白の紙を貼り付け、太鼓などを鳴らし、大勢で集落を周る様です。そして行事のクライマックスでは、悪霊・悪疫のついた紙を亜熊川に流します。基本的な流れは他の虫送りと似ていますが、御弊を使う点においては他の虫送りと異なり、全国的にも珍しいスタイルとして知られている様です。ちなみに、この立沢の虫送りは、埼玉県の無形民俗文化財に指定されている、伝統的な行事となっています。