子供の幸せな「一生」を願う「一升餅」とは一体どんな行事か?
「一升餅」とは、読んで字の如く一升分のお米を使って作るお餅のことですが、何も商品の名前ではありません。実は、一歳の誕生日を迎えた子供を祝う行事のことを言います。以下では「一升餅」という行事がどんなものなのか? そして地方によって様々あるお祝い方法について、紹介していきます。
目次
「一升餅」の祝い方は?
一歳の子供を祝う行事としての「一升餅」
冒頭で紹介した様に、「一升餅」とは、満一歳を迎えた子供をお祝いする行事のことです。では、具体的に何を祝うのかと言うと、まず「一生食べ物に困らない様に」そして、「これからの一生が健やかになる様に」など、つまり「一生の願い」を「一升のお餅」に掛けたものになります。
しかし、なぜ「一升」である必要があるのでしょうか? 「一生」と「一升」を掛けただけ? いやいや、実はそうではありません。古来より、子供が一歳になる前から歩き出すのは「早くから家を離れるので良くない」と考えられていたことから、一歳の子供に一升分のお餅を背負わせてわざと転ばせたり、はたまたお餅を投げて歩けない様にするなどの風習があったことに由来します。
地方によって呼び方は様々ある
「一升餅」は、地域によって呼び名や祝い方に大きな差がある様です。
例えば東日本(主に埼玉県)では「背負い餅」と呼び、やる内容こそ前記した例と同様ですが、理由が異なります。スタンダードな一升餅が「一歳より前に歩き出すのは良くないことだから」と言う理由であったことに対し、「背負い餅」は、「一歳を迎えた子供に風呂敷で包んだ一升分の餅を背負わせることで、一生分の重みを感じさせる」というもの。また、九州地方では「踏み餅」という名前で、「一升餅」や「背負い餅」とは全く異なる祝い方をしています。簡単に紹介すると、「踏み餅」では、一升餅を大地に例え、草履を履かせた一歳の子供をその餅の上に立たせるといった内容になっています。そこで願うのは、「子供がしっかり大地に足をつけて歩いて行ける様に」と言うことに他ならず、意味合いとしては「一升餅」や「背負い餅」と似ています。
また、「背負い餅」や「踏み餅」同様、地方によって呼び方は様々あり、「誕生餅」「立ったら餅」「力餅」「ぶっころがし餅」「ひっちょい餅」「ぶっせい餅」「ぶっつわり餅」「ぶっすわり餅」などが挙げられます。お餅の用途こそ違えど、祝う内容はどれも一歳の子供に対する健康などに共通しています。
祝う対象は子供のみならず?
しかしながら、これら一升餅を使ったお祝いは、何も子供に限ったものではなく、実は「還暦」や「古希」、さらには「白寿」や「米寿」といった、長寿のお祝いにも用いられるケースがあるのです。この場合は、紅白二種の一升餅を用意し、「お飾り」としてその場に据えます。子供のお祝いの様に、背負ったり踏んだりなどということはしませんが、大きなお餅を用意することで「持ちがいい」「長持ちする」など長寿を祝い、より長く元気で居て欲しいと言う願いが込められています。
「一升餅」の具体的なスタイルとは?
転んだらダメ? 立ったらOK?
最もスタンダードな「一升餅」の祝い方は、一番最初に紹介した「一升のお餅を風呂敷に包み、子供に背負わせる」スタイルです。しかし、一体どうなれば良いのでしょうか? 転んだらダメなのか、はたまた立てたら成功なのか? それは「どちらでもOK」というのが正しい答えの様です。
一升分のお餅を蒸すと、重さは2キロにもなります。つまり、一歳の子供にとっては非常に重く、立てる子など中々いないでしょう。しかし、そのハンデを物ともせず、立派に立ち上がった場合は讃えるべきで、縁起が良いとされます。一方、転んでしまった場合はどうなのかというと、転ぶと言うことを「歩けなかった」と解釈し、つまり「早々に家を出てしまう事実はなくなるだろう」とされるので、こちらもまた縁起が良い結果とされます。つまり、結果はどうあれ一升分のお餅に接した時点で非常に縁起が良いとされるお祝いなのです。
ちなみに最近では、一升分のお餅を小分けにして、そのうちのいくつかを子供に背負わせるといった方法で行なっているところもある様です。お餅をいくつも持って立ち上がる行為は誇らしく、讃えるべきことです。スタイルこそ違えど、我が子が成長した証を見守り、盛大にお祝いするという意味では、どの「一升餅」も変わりない行事と言えるでしょう。
餅の「形」に決まりはあるの?
「一升餅」で使用するお餅は、一般的に「円満な人生を送れる様に」と言う願いを込めて、「平たい丸型」とされています。しかしながら昨今では、小さな雪玉状のものやハート型のお餅など、近代風で自由なアレンジを施したものを使うところも増えてきていると言われています。さらに、餅の表面にお子様の名前を書き入れるところもある様です。
なぜ「餅」なのか?
なぜお祝いに「お餅」を使うのか? というと、それは古来よりお餅は「特別な存在」とされてきたからに他なりません。例えば、お正月に飾る「鏡餅」などは、その表れと言っても過言ではありません。古来より米の農耕文化が根付いている我が国には、米は貴重な食糧源として大切に扱われてきました。そして餅はそんな大切な米を凝縮してできたもので、米以上に特別視されてきたのです。故に、特別な行事や出来事があった際に供え、食べてきたことから、縁起物として浸透して行ったと言われているのです。
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