鍋料理の豆知識・鍋を囲む時に守りたいマナーについて
寒い時期にワイワイ囲む鍋料理は、美味しいだけでなく席を囲む人との距離感を縮めてくれます。家族や友人、親族と大切な人が集まる場面にぴったりの料理ですが、いつの時代から日本の文化に根付いたのかご存じない方も多いのではないでしょうか。ここでは、鍋料理の豆知識、食べる時のマナーについてご紹介しましょう。
鍋料理とは
鍋料理の歴史と文化
鍋料理を作る文化は、江戸時代後期から始まったと言われています。町家作りの住まいでは煙を嫌煙した事から、料理専用空間としての台所がうまれました。囲炉裏ではなく炭を使ったコンロが使われ始めたのもこの時期で、しょうゆやみりんと言った調味料もうまれた事が和食の発展に貢献します。囲炉裏でご飯の準備をしていた頃には大鍋を使いましたが、食卓にそのまま運べる小鍋が使われ始めて、現在に伝わる形となりました。
江戸文化の中で、おでんや湯豆腐、あんこう鍋などを提供する料理屋が増えていきます。明治時代の文明開化では、牛鍋がブームとなりました。それから現代にいたるまで具材やだし汁のバリエーションが増えていき、冬の風物詩として定着します。地域独自の鍋物まで含めると数えきれないくらいのバリエーションがあって、たくさんの人が集まる場における定番メニューの1つです。
鍋料理にまつわる言葉と比喩表現
家族や友人が集まって頂くものだからこそ、人間関係が試されるものです。雑学として知っておきたい、鍋特有の単語について見ておきましょう。
【鍋奉行】
具材の切り方や煮えているかの判断、食べる順番などを仕切る人を揶揄する言葉です。時代劇に出てくる奉行をもとにした呼び名で、皮肉がかったニュアンスにとられる事が多いとされます。
【鍋将軍】
鍋奉行よりももっと上の立場から厳格に場を仕切る存在です。自分のやり方には絶対的な自信があって、他の人の言葉に聞く耳を持たない傾向があります。家族だけで楽しむ鍋料理ならまだしも、知人・友人が集まる場面では自分の主張を抑える配慮も必要でしょう。
【悪代官】
出てくる灰汁をまめにとり、影の支配者として場を統括していく存在です。地道な作業が必要だけに真面目さがものを言う仕事で敬遠されがちですが、おいしく食事をするためには重要な存在でしょう。
【町奉行(町娘)】
野菜を入れたり灰汁をとったりする仕事には関わらず、ひたすら出来上がりを待つ立場です。できたものを取り分けてもらって場を楽しむ事に集中できる役得があります。
大人数で楽しむ際のマナー
自分のお箸は鍋に入れない
大勢で鍋料理を囲む時、自分のお箸を直接鍋に入れるのはマナー違反に当たります。お玉・取り箸を使ってお椀に取り分け、直箸を避けましょう。ホームパーティーで鍋料理をする時には、人数分のお椀を用意します。生の材料を自分の箸で扱う事によって食中毒を起こす恐れもありますから、健康を気遣うためにも配慮しましょう。
お椀に1回よそった具材を鍋に戻すのも上品には見えないため、食べられる分だけを取り分けます。肉だけ・野菜だけといった取り方ではなく、いろいろなものをバランスよく食べたいものです。1人が片寄った取り方をすれば、特定の具材を食べられない人が出てきて、心地良く楽しめません。お椀の7分目くらいまでが美しく見える目安なので、よそう時の参考としましょう。
迷い箸・探り箸を避けること
たくさんの具材が入っている鍋料理だと、どれをとろうか迷ってしまって「迷い箸」をしやすくなります。目的の具材がどこに入っているのか探るための「探り箸」も美しいマナーとは言えませんので、自分の分を取り分ける際に注意しましょう。
その他に気をつけたい箸のマナーとして、以下のような事柄があげられます。
【渡し箸】
自分の食事は一休みして、灰汁取りや具材の追加をしようとした際、やってしまいがちな間違いです。小皿の端に差し掛けるように置き、食事をしている最中である事を示します。
【寄せ箸】
遠くの器を箸で引き寄せるように持ってくる行為を指します。子供がやりがちな間違いなので、その都度正してあげる事により、正しいマナーを教えましょう。
【刺し箸】
鶏団子やこんにゃくなどを食べる時に、うっかりやってしまう事があります。どんなものでも難なくつかめるように、日頃から箸の使い方を練習しておくと安心です。
【押しこみ箸】
大きな具材をそのまま口に入れてしまうと、やりがちな失敗です。無理なく口の中におさまる大きさにあらかじめ切って、ゆっくり食べると良いでしょう。
【ねぶり箸】
箸の先につけダレがついてしまったからといって、なめとるのはNGです。たくさんタレをつけすぎると涙箸にもなりやすいため、適量をつけてください。
鍋料理は宴会・年末年始の集まりなどでも良く出されるメニューですから、美しい所作で楽しめるように基本のルールを覚えましょう。箸の使い方は、和食全般で共通するマナーです。どんな場所に行っても恥ずかしくないように、正しい持ち方と使い方を練習すると良いでしょう。
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