臨終行儀とは? 看取る家族の心構えとターミナルケア
命を引き取る時に浄土を願う臨終行儀は、古くから日本人に根付く考え方です。著名な僧侶が書籍に残した臨終行事は、今の時代を生きる私たちにとっても参考にできる内容でしょう。臨終とはそもそもどのようなことか、看取る家族としてどのような心構えを持てばよいのかをご紹介します。
臨終行儀とは
そもそも臨終とは
臨終とは、人が亡くなる間際や息を引き取る瞬間を指します。臨終行儀とは、臨終の時に行う儀式や作法をまとめたものです。著名な僧侶がまとめたものが現在にも残っていて、病室の整え方や亡くなる方に対する接し方を教えてくれます。お経の唱え方、亡くなる方の服装といった儀礼的なものも含む内容が一般的です。
古くから「臨終の相の様子によって成仏できるかどうかが決まる」という考え方がありますので、穏やかに息を引き取ることが重要視されたことから臨終行儀がうまれました。亡くなる方が死を受け入れること・看取る方が亡くなる方の往生を支援する方法などが含まれています。臨終は生きていくうえで最も重要な時間ともされていて、穏やかな別れを迎えるためにどのようにすればよいのか説く仏典の内容は広く世間に広まりました。時代が変化したとはいえ、大切な方との別れに面した時にどのように対応すればよいのか考えるきっかけを与えてくれます。
往生要集の臨終行儀
臨終行儀の書物としては、天台宗の僧侶が「往生要集」が有名です。往生要集の解説本として「臨終行儀注記」「孝養集」「臨終用心事」などが知られています。
臨終を迎える方は無常院と呼ばれる建物に寝かせて、仏様に導かれて浄土に向かうことができるようにはからうこと・看病にあたる方は臨終を迎える方が心穏やかに往生できるように配慮すること・念仏を唱えることなどが含まれる内容です。
看取る方の心得は、11世紀に書かれた「看護用心抄」の解説が有名です。臨終を迎える方には別室を用意する・心が乱れないようにかける言葉には細心の注意を払うといった実践的な内容が含まれていて、現在のターミナルケアにも通じる内容とされています。
現在における役割
亡くなる方にとっても、見送る方にとっても重要な役割を担ってきた臨終行儀ではありますが、病院で息を引き取る方が増えるにつれて、姿を消しつつある現状です。一部の僧侶や医療関係者が協力して死に向き合う取組みもなされていますが、以前の臨終行儀ほど一般的な存在には到りません。
終活に関心を持つ方は増加傾向にありますが、死の哲学や死後のあり方についても目を向けることにより、最期の時を穏やかな心で迎えることもできるでしょう。昨今では臨終行儀に関して学ぶセミナー、勉強会に看護師や介護士、ケアマネージャーが関心を持ち始めていることから、今後のターミナルケアのあり方が変わっていく可能性も秘めています。
ターミナルケアとは
ターミナルケアの考え方
ターミナルケアとは、重い病気で余命がわずかとなった方が残された時間を自分らしく全うできるようにサポートしていくあり方です。日本的ターミナルケアの原点が臨終行儀にあるとされる事も多くて、穏やかな心で残りの時間を過ごすことができるように支援します。
ターミナルケアは緩和ケアの一貫という考え方もありますので、痛みや不安といったマイナス要素をできる限り軽減、心残りがないようにしていくことが重要です。緩和ケア病棟であるホスピスで行うサポートの他、施設や自宅で過ごすことを希望される患者さまやご家族もいます。
本人の意向がはっきりしている段階から、どのようなあり方が望ましいのかきちんと話し合っておくことにより、意向をふまえた対応を考えていくことができます。デリケートな問題ですので、本人の気持ちに配慮した聞き方が重要ですが、折りを見て話し合いをしてみましょう。
ターミナルケアを始める時期・方法
ターミナルケアは必ず行うものではなく、本人やご家族の意向によって判断されます。ケアをはじめることは「これ以上の延命治療を行わない」という意思表示に通じるものがありますので、慎重な判断が必要です。
本人では判断が難しい状況の場合には、医師の診断や看護師、介護士といった関係者のアドバイスをもとに、ご家族が決めることになります。お別れの時に向けてどのようなあり方が望ましいのか、ご家族としても心積もりをしておく必要があるはずです。
臨終行儀でも看取る方の心構えが重視されるように、本人はもちろん周囲の判断によっても臨終の場所やあり方が変わってきます。親族間で意見が食い違うと思うように対応できないこともありますから、兄弟・姉妹やご夫婦での話し合いも必要でしょう。
具体的なケアの内容ですが、着替えや排泄といった身の回りのお世話から、痛みの緩和、栄養補給などがあげられます。精神面でのサポートとしては、想い出のアルバムを手の届く範囲に置く・家族や友人と話しをする機会を作るといった、不安を解消して心地良く生活できる環境を整える配慮が必要でしょう。死に直面した患者さまは、否認・怒り・抑うつといろいろな感情を持ちやすく、心の変化に応じたサポートが求められます。
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