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『過去の父からの贈り物』 入賞作品2-812-062 佳作 宮原 宮介 様
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『過去の父からの贈り物』 入賞作品2-812-062 佳作 宮原 宮介 様

 二十七歳を迎える年、一通のはがきが届いた。小学校六年時にクラスで埋めたタイムカプセル開封式の案内だった。当時、みんなが結婚し始めるだろう十五年後、つまり二十七歳になる年を開封日にすると学級会で決めたことを思い出し、僕は苦笑した。僕はまだ結婚していない。

 十五年の時が過ぎても、当時何を入れたか覚えていたので、中身を開ける楽しみよりも、むしろ担任の先生やみんなと会えるほうを楽しみにしていた。当日開封式はつつがなく進行した。当然懐かしさもあるが、思った以上に盛り上がりに欠け、舞台は次の飲み会へと変わろうとしていた。

「皆さん待って下さい。皆さんのご両親にも、タイムカプセルに思い出を入れてもらっています。」

 先生は突然そういうと、名前を呼びあげ順々に配っていった。両親からの手紙に涙する友達もいれば、思い出の品に喜ぶ友達もいた。

 僕に渡されたのは、小学校卒業後しばらくして病気で亡くなった父からの手紙だった。当時反抗期だったこともあり、ほとんど父とは口をきかなかったので、何が書かれているかは全く予測できなかった。また、当時父の意向で余命間近だったことが聞かされておらず、残された時間を父と過ごすことはなかった。

「母さんから俺がもらった時計をお前にやる。母さんには失くしたってことにしてあるから、上手く謝っといてくれ」

 手紙にはそう書いてあり、封筒の中には腕時計が入っていた。

 まだ、父と仲が良かった小学校低学年のころ、いつも父が大切につけている時計をほしがっていたことを思い出した。

「お前が大人なって立派になったら、いつかあげるからな。」

 その約束が今叶った。父さん、覚えててくれたんだ。

 その日、遅くまで友人と飲み語り合い、家に着いたのは午前二時だった。母が珍しく起きていた。

「お父さんなんだって?」
「あぁ、父さんが手紙を書いたこと知ってたんだ。母さんに謝っといてくれってさ。」

 そうして、父からもらった時計を見せると母は泣き崩れた。本気で父さんが時計をなくしたと今まで思っていたらしい。
 そして、今僕は母が父に贈った時計をつけて仕事をしている。 両親からもらった物を身に付けるなんて、少し恥ずかしくもあり、誇らしくもある。ようやく反抗期が終わった気がした。