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『ハートインギフト』 入賞作品2-602-021 佳作 アレックス 様
贈りものがたり
 

『ハートインギフト』 入賞作品2-602-021 佳作 アレックス 様

 私がまだ学生だった頃の話です。
 高校、大学とアメリカのオレゴン州にいたのですが、外国人はあまり在学していない学校でした。
 ですが、その中にアフリカから来ていた学生がいました。英語はあまり話せない子で、コミュニケーションがなかなか思うように取れない彼は、友達を作るのも苦労している様子でした。

 アメリカの学校にも、日本と同じように季節毎に休暇があり、学生たちはそれぞれ故郷などに帰って家族と時間を共にします。私も、休暇中は寮がクローズしてしまうこともあり、休みはほぼ毎回日本に帰国して家族と過ごしていました。

 先ほどお話した通り、私の在学していた学校には外国人が少なかったので、海外のお土産(特に日本のもの)を持って休み明けに帰ると、とても喜んでくれるので私はいつもお土産を買って帰っていました。

 夏休みを日本で家族と過ごした後、例のごとくお土産を持って再びアメリカへ飛び立ちました。私が寮に着いた時にはまだ他の学生達は誰もいなかったのですが、アフリカ人の彼だけが既に居たのです。

 二人きりですし、せっかくなので日本から持ち帰ってきたお土産の一つを彼に渡しました。
 ただの東京タワーのキーホルダー一つだったのですが、彼は幼い子供のように喜んでくれたのがとても印象に残りました。
 その時に少し話をしてわかったのですが、どうやら彼はアフリカに十六人の家族がおり、彼が長男なので他の兄弟の教育を諦めて長男である彼だけが渡米してきたとのことでした。

 貧しい家なので休暇に家族の元へ行く飛行機のチケットも買えないため、長い夏休みを、安ホテルなどを転々として一人で過ごしていたそうです。

 寂しさと悔しさを押し殺して彼が過ごした期間の辛さは、私には想像するだけで涙が込み上げてきました。

 そんな思いをしていたのなら、変なキーホルダーじゃなくてもっと何か喜ばれるものを買ってくれば良かった。そう思いました。

 それから新学期が始まり、私は彼と話すようになりました。話していくうちに、彼のことがいろいろとわかってきました。
 兄弟が十一人いること、一番下の妹が生まれたこと、サッカーが好きだけどボールは空気の入っていないバレーボールだったこと、靴は兄弟で使いまわしていること、などなど、先進国の中でも比較的裕福な国で育った私たち日本人ではなかなか想像が難しい生活の話などが聞けました。

 彼と話をなるべくして彼の英語の上達の手助けをしたり、勉強を教えてあげたりしながら平凡な日々を過ごしていると、卒業の日があっという間に来ました。

 卒業してそれぞれの道を歩み、あれから十年がたったいま、彼とインターネットのSNSで久しぶりに話をしました。
 すると、彼はいまパイロットをしていて、その給料で家族全員を養っているといいます。
 彼が言いました。

「君がくれた東京タワーのキーホルダー、いまも大事にしているよ。本物の東京タワーが見てみたくて、パイロットになることを決めたんだ。君が僕の人生に刺激を与えてくれた。どうもありがとう」

 私は胸を打たれました。
 たった数百円のキーホルダーを、贈っただけで、1人の人生を左右させたのだと。
 それから私は、人にモノを贈るときは本当に心を込めて贈るように心がけています。